
[富良野]
観光情報誌のライターをしていたころ、一軒のリゾートホテルを知った。
プチホテルとでもいうのだろうか、個人オーナーで、よくありがちなペンションを一回り大きくした程度のホテルだった。
年配のオーナーは画家でもあったようで、写真を撮るボクを、同じアート志向の人間として可愛がってくれた。
用もないのにふらりと遊びに行けば食事をごちそうしてくれたり、何度かは泊めてもらったこともある。
アルバイトでそのホテルのレストランの名前を考えてやったり、パンフレットをつくってやったこともあった。
そのホテルに、女性の支配人がいた。
どういう経緯でホテルに雇われることになったのかは知らないが、田舎育ちではないようなあか抜けた雰囲気があり、自律的にしっかりと仕事のできそうな、キャリアウーマン風の女性であった。
そのホテルはそんなにはやっていなかったので、ボクが遊びに行くと、支配人は、ロビーのソファでボクと向き合い、コーヒーをすすりながらひとしきり雑談につきあってくれるのだった。
恋愛感情を持つ…というほどではなかったけれども、ボクの中では、“可愛いヒトだな”という印象ではあった。
ときどきホテルに足を運んだのも、無意識のうちに、そのヒトに逢いたい気持ちがあったのかもしれない。
何度かホテルに通っているうちに、いつの間にか、支配人の苗字がオーナーと同じに変わっていることに気づいた。
その経緯についても何も報されなかったし、改めて尋ねることもしなかったけれども、オーナーも支配人も、普段はホテル内で寝起きしていたらしく、“大人の事情”か何かで、夫婦同然のような日常になるのであれば、正式に夫婦の形をとったほうがいい、ということになったのかもしれない。
ただ、二人は歳が離れていたし、純粋な恋愛感情で結ばれたようにも思われなくて、ボクはずいぶんとモヤモヤとした気分にさせられた。
ほどなく、そのホテルはつぶれた。
芸術家肌のオーナーだったが、経営は素人だったのかもしれない。
ボクが通っていたころも、ほんとうにはやっていなくて、他人事ながら“やばいんじゃないかな”と思っていた矢先だった。
やり方次第ではもっとどうにかなったかもしれないのに、もったいないなとも思った。
オーナーも支配人も、行方知れずだ。
二人とも、ちょっとやそっとのことでは人生に絶望するような人ではないから、今でもどこかでたくましく生きていると思うのだけど、はたして、今でも二人で手を取り合って生きているのか、別々の生き方をしているのか、少しだけ気になる。
ホテルは、買い手もつかないまま廃墟になって今でも悲しくたたずんでいる。
その廃墟の前を通るたび、「あのヒトはどうしているのだろうな」と、彼女の面影を偲んでみるのである。
テーマ:写真にコトバをのせて - ジャンル:写真
- 2008/12/20(土) 23:14:07|
- OLYMPUS E-510
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情緒的なことからかけ離れたコメントですが、
よく廃墟のままの建物を見ますが、これってどうにもならないのかなーって思います。
勿体ない・・・。
って、それを買うお金もないんだけどさ。
- 2008/12/22(月) 12:33:34 |
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- tsukasa #2oMqC0Wc
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いや、それはボクも思う。
“廃墟写真”っていう一つのジャンルもあるけど、やはり、見た目、あまりいいもんじゃないような気がする。
と言って、元の所有者には、それをどうする余力もないのだろうし、よほど景気のいいときでもなければ、買い取って再開発しようって人もいないだろうし…。
完全に朽ちるのを待つしかないのかなあ…。
- 2008/12/22(月) 21:49:41 |
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- 津島 #-
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