
ひと晩中しんしんと降り積もった雪が朝にはぱったりとやみ、なにごともなかったかのようにすかっと空が晴れ渡った時などは、それはそれは美しい雪景色が広がる。
岩手への一泊出張を終えた昨日の朝がちょうどそういう天気だったので、こんな美しい雪景色の中を走るローカル線の写真を撮ったら傑作間違いなしと思い、かねてお気に入りの場所でスタンバっていたのである。
ところが、来ないのだ、列車が。
道路のほうはさほど走行に支障はなかったから気にならなかったけど、鉄道のほうは、列車が止まるほどの大雪だったようだ。
たとえば、ハンバーグを食べたいと思って腹がすっかり“ハンバーグモード”になっている時に「ソーメンで我慢して」と言われてもそんな譲歩は断じて出来ないわけで、“雪景色の中のローカル線”というモードになっていたのに列車が来ないからといって、「それじゃあ他の雪景色の写真でも撮ろうか」…とはならないのである。
すっかりしょげてしまって、そそくさと帰ってきてしまった。
暮れの大内宿の時のように何も期待しないで行ったら素晴らしい撮影日和に恵まれることもあれば、期待して行ったのにまったくアテがはずれてしまうこともある。
とかく撮影行(と人生)は、ままならないもので。
もう30年以上も昔の話。
写真学校の学生だったボクは、クラスメートのA子と、もう一人の男の同級生と3人で、冬の京都に撮影行に行った。
A子は、恋人とかガールフレンドとかいうのではなかったけど、ボクにはそこそこ親しくしてくれていた。気があったかなかったかと言えば、ボクも少しは彼女に気があったかもしれない。
雪こそ降らないものの、冬の京都の底冷えは凄まじい。
ボクらは、大原の民宿に宿をとり、夜は宿のおばちゃんに熱燗を入れてもらって部屋のコタツでちびちびと飲んでいた。
酔うにつれ、A子の言葉が少し荒くなってきた。
ボクが悪意のある言動をとったわけではないのだけど、ボクが何気なく吐いた言葉が、彼女には、触れてほしくない事柄であったようなのだ。
「なんで、そんなこと言うの!?」と、A子はボクを責め立てる。
ボクはボクで、「その程度のことでなんでそこまで言われなくちゃならないんだ!」…と思い、「この旅はもう終わりだな」と、思った。
荒れるだけ荒れて、A子はコタツに入ったまま、寝入った。
A子の体に布団をかけてやり、ボクは隣室に移った。(一応二部屋とっていたので)
ボクのほうもはなはだ面白くなく、A子には「勝手にしろ!」と言いたく、朝になったら一人で先に宿を出ようかとも思っていた。
翌朝、彼女はボクの居る部屋に入ってきた。
起きてみたらボクの姿がなかったので心配になったのかもしれない。
夕べあれだけ荒れたのも忘れて、今朝はなんだかしおらしい。
ボクの腹立ちの矛先も鈍り、結局ボクたちの京都撮影行はそのまま続行された。
今にして思えばA子とはもう少し深い仲になっていてもよかったはずだったのだけど、そうはならなかったのは、あの頃はまだボクは男女のことには奥手で(いえ、未だにそうですけど)、それと、オンナゴコロを理解できるほどの度量が自分にはなかった、ということ。
とかく撮影行(と人生)は、ままならないもので。
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テーマ:冬の景色 - ジャンル:写真
- 2011/01/14(金) 23:48:59|
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