津島修三ブログ

カメラマン兼ライター津島修三のブログ

愛を、放し飼い

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「今夜はちょっと飲んでくるから」と言って家を出てくる時は、ボクの酒席の相手は、十中八九、一人の女性か、メンバーの大半が女性というグループだ。
それを承知の上で女房は、「気をつけて帰ってきてよ」と言うくらいで、それ以外は何も言わず気持ちよく送り出してくれる。
〈少しくらい外をほっつき歩くことがあったって、どうせ戻ってくるのはここなんだから〉と、女房はあまり細かいことは意に介していないらしい。
その女房の肝の据わりぐあいが、亭主の自慢でもある。

あるときボクは女房にこう言ったのだ。
「たとえばお前の高校のクラス会とかあってさ、久しぶりにちょっと気になってた男子と再会して、お互い、ちょっとまんざらでもない気分になったら、少しくらい帰りの時間が遅くなったって、オレは構わないんだぜ」
そんな相手はいないわよ、と彼女は言うのだけど、彼女はボクの妻として生きていながら、同時に、彼女自身の人生としても生きているわけだから、ボクとしては、その“彼女自身の人生”という部分で未練や後悔を残してほしくないのだ。
もう少しゆっくりしていたいときに、亭主の怒っている顔がちらちらしてシンデレラのように慌てて家路を急ぐことはない。
どうせ彼女も戻ってくるのはここなのだから(とボクは信じてる)、帰宅の電車が一本二本遅れたくらいでちまちま目くじら立てることもない。
未練を引きずって帰ってこられるよりも、すっきりして(?)帰ってきてくれたほうが、ボクもうれしい。

結婚したての頃は、クラス会の帰りが30分遅くなったくらいでも「なんで時間通り帰って来れないのだ!」などと激しい剣幕で責めたものだけど、結局、いつの頃からか、「お互い、放し飼いにしても遠くに行きっぱなしになるようなことはなさそうだな」ということに、気づき始めたのだ。

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  1. 2006/01/31(火) 23:23:50|
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リトマス試験紙

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O型の男はずるいかもしれません。
相手の言うことには大抵なんでも合わせられるけど、自分から流れや空気を変えてしまうようなひと言が、なかなか口に出来ません。
それは、臆病な気持ちが半分、どっちでもいいやという気持ちが半分。
なので、O型の男とつきあっていて、男のひと言を待っていると、女はしびれを切らしてしまいます。

一度扉を開けてしまうと、もう後戻りは出来ない世界があります。
O型の男が扉の前でじたばたしているときに、もう女は覚悟をつけていることもあります。
簡単に相手の気持ちがわかる「リトマス試験紙」でも、あればいいのに。

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  1. 2006/01/30(月) 23:05:51|
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Tシャツ一枚に、グッバイ

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もう、ヨレヨレのTシャツだ。
ボクの持っているどのTシャツよりもヘタッている。
前々から女房には「それ、もう捨ててもいいんじゃないの?」と言われていたのだけど、「もう少し着る」と、ズルズルと温存してきたTシャツだ。
このTシャツの贈り主の写真は一枚も持っていないので、プレゼントされたこのTシャツだけが、その人を思い出させる唯一の手がかりなのだ。
このごろやっと、このTシャツはもう捨ててもいいかな、と思い始めている。
ヨレヨレのままクローゼットにしまい込んでおくのは、かえって哀しい。
これからは、モノに頼らずに彼女のことを思い出さなければならない、新しいボクの季節だ。

それにしても、どうしてボクは一枚も彼女の写真を撮っておかなかったのだろう。
二人には永遠に別離(わかれ)の日など来ないと、信じていたのだろうか。

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  1. 2006/01/29(日) 23:09:42|
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手をつないでやるから

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雪景色を撮る旅をしたいと言ったら、「あたしも行く!」と言って強引にきみもついてきた。
ボクたちは恋人同士というわけではないから、宿は同じでも部屋は別々にとった。
旅の一日目、思い思いに写真をとって、夕方宿に入って、食事は一緒にとって、少し酒でも飲もうかと、部屋に熱燗を運んでもらって、差し向かいで酒を酌み交わした。
部屋には電気こたつが入っていた。凍える夜だったけれども、楽しい時間が流れていた。
きみは、少し酒を飲み過ぎた。
酒に飲まれて、ボクにからむようなものの言い方をするようになってきた。
意外だった。そんなコだとは思っていなかったので、ちょっとやるせなかった。
「きみのそういうところ、はじめて見たよ」
その言葉にきみはさらに噛み付いてきた。
「あなたは、あたしのこと、なんにもわかっちゃいない!」
それからきみは涙声で(もちろん、酒がそうさせているだけなのだけど)、いろいろと自分のことなどをボクに言って聞かせるのだ。でも、その言葉に何か意味があるというよりは、飲み過ぎた酒の反動で心の底に沈んでいた言葉たちが勝手に溢れかえってきただけのようでもあった。
ボクは、たとえ友人としてでも、少しきみに気持ちがさめ始めていた。
もうどうでもいいや。明日宿を出たら、あとは別行動にしようか。
いや、きみが寝ているうちにボクだけ先に宿を出たっていい。
別に、旅先に恋人を置いてけぼりにする、というわけじゃない。ボクには罪も責任もない。
酒を飲んでいるこの部屋はボクの部屋で、君の部屋は隣だったけれども、さんざん騒いだあとにきみはことりとそのまま横になってしまったので、きみに布団をかけて、ボクが隣の部屋に移ったのだ。
翌朝早く、きみはボクの枕元にやってきた。
「ツシマくん、ごめんね…」
ボクが不機嫌になる原因を自分がつくったのだと、きみはうっすらと気づいているようだった。
ボクは、きみに怒っているとか嫌いになったとかいうのではない。気持ちがさめてしまっただけなのだ。
だから、きみを責める気力もないし、引き止める手を振り払うようにしてまでも先に宿を出るような邪険さもない。
きみが今日も一日一緒に行動したいというなら、好きにするがいいさ。
凍える朝。
バス停でバスを待つ間、寒い寒い、ときみは震えていた。
「まったく、世話の焼けるやつだなあ。ほら、オレのポケットに手をつっこめよ」

手をつないでやるから。


- 秋田市 河辺 -

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  1. 2006/01/28(土) 12:19:44|
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グッジョブ、ポリスマン!

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仕事、というか、研修のための上京だった。
二日かけて、職業上の技術を教えてもらうことになっていた。
夜は、安いビジネスホテルでも手配して、缶ビールでも飲んだらあとは寝るだけだ。
一日目の研修の夕方近くなって、ふと、「そういえば、あいつ、どうしているかな」と、思い出すやつがいた。
二つ年下、高校の時のサークルで一緒だったやつで、妙に僕になついていた。
東京の大学病院で看護婦として働いているはずであった。
最初から彼女に会うつもりだったら、秋田を出る前にハガキでも出していたか、せめて彼女から届いていた手紙から住所だけでもメモしてきていたものだが、なにしろ東京に着いてから思いついたものだから、住所もうろ覚えだ。
だけれども、想い始めたら、なんだか無性に彼女に会いたくなった。
それが彼女にとって名誉なことであるかどうかはともかく、彼女は僕のファーストキスの相手だった。
一日目の研修が終わって、可能であればせめて食事でもしたいものだと、うろ覚えの住所のまま、電車に乗って、彼女の住んでいそうな地域のアパートを探しまわった。
近くまで来ていそうな気はするのだけれども、どうしても辿り着けない。
住所もろくに覚えていないのだもの、しょうがないよな。
これはもう諦めるしかないと思い、帰りかけたところに警察署があった。
ダメでもともと、近所にそれとおぼしきアパートがないか聞いてみることにした。
当直勤務らしい私服の警察官がカウンター越しに応対してくれた。
「このあたりに友だちの住んでいるアパートがあるはずなんですが、住所も控えないまま来てしまったので、迷っているんですよ」
どれどれ、と私服の警察官は住宅地図を取り出してきて、周辺のアパートを指でなぞってみる。
それらのいくつかは、すでに僕があてずっぽうにまわったところだ。
「うーん、やはりそれらしいところはないですねえ。すみません、僕の勘違いだったかもしれません。諦めます。ありがとうございました」
「でも、会いたいんでしょ? その人に…」

僕は、尋ね人が女性であることは言ってなかったのだけれども、彼はとっくに勘づいていたようなのだ。
Good job, policeman!
そこまでちゃんと察して、アパート探しを手伝ってくれてたんだね!

結局彼女には会えずじまいだったけど、ホテルに帰る電車の中で、あの私服の警察官の一言に、少しだけほっこりとした気分にさせられていたのだった。

- ニューヨーク JFK空港 AirTrain -

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  1. 2006/01/28(土) 01:04:21|
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帰るところのある人と

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あなたには、帰るところがある。
それを承知で、僕はあなたを引き止めたのだ。
引き止めはしたけれども、永久にどこにも帰さない、というわけではない。
そこがあなたに居づらいところであるならば、僕は「帰らなくてもいいんだよ」と言うけれど、今でもそこがあなたの帰る場所ならば、いつかは帰っていくあなたの後ろ姿を、僕は恨まずにいたいと思う。
なにごともなかったように、柔和な顔で、待つ人たちのところに戻っていってほしい。
ふらりと出かけた街角で偶然にコーヒーのおいしい喫茶店をみつけたように、あなたは、ちょっとだけ“お出かけ”が楽しくなる場所を見つけただけなのだ。
僕は、その喫茶店の、マスターに過ぎない。
あなたには、帰るところがある。
ここで向き合って過ごすひとときと同じように、帰っていくあなたの後ろ姿にも、僕は優しいまなざしでいたい。

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  1. 2006/01/26(木) 20:58:58|
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業務連絡→携帯閲覧

主に水無月さま、ワカリマシタ(^^)
拙ブログは、
http://tsushima.blog20.fc2.com/?m
というURLにて、携帯でも閲覧できるようです。
どうぞ、津島を肌身離さず携帯なさってくださいますように。

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  1. 2006/01/26(木) 20:40:36|
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桟橋に、現れなかったヒト

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船のチケットも、宿の予約も、すべて二人分で手配していた。
だけれども、出港の刻(とき)が迫っているのに、桟橋にきみは現れなかった。
まだ携帯電話も普及していない時代、約束の場所にどちらかが行けなかったら、もうなす術(すべ)はなかった。
二人で乗るはずだった船に、僕は一人で乗り込んだ。
デッキに出て、船がエンジンのうなりを上げ始めても、きみが息を切らして桟橋に駆け込んできやしないかと、ずっと目を凝らしていた。

僕らは、酔った勢いも手伝って、一度だけ、僕のアパートで一緒の夜を過ごしていた。
それでも、そのあともずぅっと僕らは“友だち”のままだった。
一度、僕の体験した船の一人旅の話をしたら、きみは目を輝かせて、「あたしも行ってみたい」と言い出したのだった。
じゃあ今度の休暇に一緒に行こうか、と話は簡単に決まり、この日桟橋で落ち合うことにしていたのだ。

まだ恋という形にすら至っていないのだから、これを失恋と呼ぶわけにはいかないだろう。
船は半日かけて海原を進み、翌朝まだ薄暗い時間に港に着く。
僕は、少し複雑な気分でタラップを下りる。

あとになって、きみは桟橋に向かえなかったことを僕に素直に詫びた。
突然やむを得ない事情が出来たのだった。
もしあのとき一緒に旅が出来ていたならば、僕らは、友だちから恋人に、階段を一段あがっていただろう。
少なくとも、僕はそれを望んでいた。

失恋でもなく喧嘩別れでもなく、それは、
育たなかった“恋の未熟児”、のようなもの。

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  1. 2006/01/24(火) 22:46:46|
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そしてそのボヤは鎮火した

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友人Kが on the edge な恋をしていた時、Kにとってそれは、トクベツなことでもリスキーなことでもない、と少なくともK自身は考えていた。
しかし、Kの自信が揺らいだのは、二人のあいだに季節の変わり目が来て、「今までありがとう」などと大人な言葉を掛け合って手を振って別れたあとのことだった。
「そういう寿命の恋だったのだから仕方ない」とKは諦めつつも、ずぅっとずぅっと、彼の中ではモヤモヤしたものが渦巻いていた。

 終焉の本当の理由はなんだったんだろう。もしかして、他の男の影?…などと

Kは、気持ちの整理がつかなくて、かなりのあいだ、悶え苦しんだ。
どこかに行けば、彼女が他の男と会っている事実を確かめられるのではないか、などとも考えていた。(そんなことをしても何にもならないのに)
会っている男がいるとしたらアイツではないだろうか、などと相手を推理してみたりもした。(そんなことをしても何にもならないのに)
Kの中の行き場のない残り火は、ずいぶんと長い間くすぶっていたのだ。

特に何かきっかけがあったわけではない。
ある日ふと、憑き物がおちるように、Kの気持ちが軽くなった。

他の男とつきあっていたっていいじゃないか。少なくともオレは彼女と出会えて幸せだったし、つきあっていた頃は楽しかったし、彼女だってあの頃は楽しかったはずだ。そんなに愛した彼女なのだから、たとえ彼女の心変わりがあったのだとしても、それを恨むのではなく、今も彼女が幸せであってほしいと考えたほうが、“生産的”なんじゃないのかな。

もし、今、街でばったりと彼女と出くわすことがあったとしても、彼女が他の男とつきあっているかいないかに関係なく、あるいは、新しいボーイフレンドと一緒だったとしても、「おう、ひさしぶりぃ! 元気かい? 楽しくやってるかい?」と、快活に声をかけてやれそうだと、Kは言うのだ。

後ろ向きな考え方をしてしまったら、せっかくの想い出も汚れてしまう。
みすみす自分から、かけがえのない想い出をすぼませることはない。

…と、これはあくまでも友人Kの体験談。(ってことで)


- マンハッタン リトルイタリー -

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  1. 2006/01/23(月) 16:42:49|
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左側にいるボク

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昨夜も女房は「寒い」と言って、ベッドの左に寝ているボクにくっついてきた。
朝になって起きてみたら、掛け布団がずれていて女房の右半身がすうすうする状態だった。
寒いはずである。
掛け布団がずれて寒いんだったら、布団をたぐり寄せて元の位置に戻せば済むことなのに、それをしないでヒトに身体をすり寄せてくるものぐさの極みの女房なのだ。実にコマッたやつである。

アメリカ映画のシーンなどを思い出していただきたい。
たとえば、夫婦の寝室。そのWベッドの中で、十中八九、男は右、女は左に寝ている。特別な意図のあるシナリオでない限り、これが男女の並びの“定位置”なのだ。
もしその並びが逆だったら、映画を観ている者は、なんとなくおさまりの悪い印象を受けたり、シナリオ上の伏線を感じないわけにはいかないだろう。
これにはちゃんとワケがある。
人間は、ほとんどの人が右利きである。そして、男女の間では、多くの場合、男性のほうが何かにつけてリードしてきた。つまり、右利きである男は、自分の利き腕である右手を自由に使えるようにしておきたい。そうなると、必然的に、女性には自分の左側にいてもらったほうが、ナニカニツケテ都合がいいのである。女性も、いつの間にかそれに慣らされて、女のあたしはベッドで左に寝るもの、と思い込むようになる。
これは、頭の中で考えてそうするのではなく、無意識のうちになされることなのだ。だから、ベッドシーンでなくても、たとえばデートしていて公園のベンチで並んで座ってちょっと一休み、というシチュエーションでも、ほとんどの場合、無意識のうちに、男子が右、女子が左に座っているはずである。
このことは、洋服のボタンが男女で左右逆になった歴史にもつながる話なのだけど、それはまた別の機会に。

ここまで話したらご理解いただけるだろうが、ボクがWベッドの左側で寝るのは、ボクが左利きだからなのだ。
小さい頃に矯正させられたので、箸やペンやハサミは右手で持つようになったけれども、丸みをおびたものを扱うのは今でも左手のほうが塩梅がいいのだ。
ボールとかマウスとかおっぱいとか...

人生、ベッドではずぅっと左側だった。
たとえ相手が変わっても。
あ、いや、それを明言してしまうと刑事訴追を受ける恐れがあるので、証言は拒絶する。
もとい、
もし仮に、万が一、相手が変わることがあっても、ボクはベッドの左側でその人がシャワールームから出てくるのを待っていることだろう。(という記述にしておこう...)

もちろん、「ベッドの右じゃ落ち着かないわ」とか、「今日はあたしにリードさせて♪」と左利きの女性に言われるのなら、ボクは喜んで右側でお待ち申し上げるのである、たぶん。

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  1. 2006/01/22(日) 12:46:47|
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ジャマでない、という愛し方

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きみにぞっこん、というわけではない。
きみでなければだめなんだ、というわけでもない。
でもでも、ボクはちっともきみがジャマでない。
たぶんきみにも、ボクはジャマでない。
お互いがお互いをジャマでないと思えること、これは結構すごいこと。
ながく一緒にいられそうな人と出逢えて、よかった。

- 秋田県仙北市角館町 -

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  1. 2006/01/21(土) 16:15:49|
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きみの写っていない想い出写真

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どこかに出かけると、何枚も何枚も、きみの写真を撮ったね。
でもそれは、誰にも見せられない写真。
写真に写っているきみのまなざしを見れば、ボクたちがつながっている関係であることを、すぐに人に知られてしまうから。
だから、誰かに見せるボクの写真には、一枚もきみが写っていない。
でも、それでいいのだ。
古い写真を見るたびに、そのとき横にきみがいたことを、ボクは確かに思い出せるから。

- 長野県安曇野市 大王わさび農場 -

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  1. 2006/01/21(土) 01:49:38|
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かけおちごっこ

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「なんだか、あたしたち、“カケオチ”してきたみたいな感じだね。ふふふ」
「ああ、そんな気分も悪くないな」
「知ってる人なんか一人もいないはずなのに、誰か知り合いに見つかってしまうんじゃないかと、きょろきょろそわそわしてみたりして」
「愛想の悪い安宿に予約もしないで飛び込んで、宿の人が気味悪がるくらいに部屋に閉じこもって、人生の最後の精液のひとしずくまで出し尽くすつもりで、何度も何度も抱き合うわけだ」
「ったく、あなたって人は、すぐそっちのほうの話になるんだから…」

さっきまで軽く手をつないで歩いていた二人だったが、一度その手をほどいて、その人はあらためて僕の右腕にからみついてきた。

 -木曽 妻籠宿-

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  1. 2006/01/20(金) 11:14:29|
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業務連絡

このブログの写真には、ほとんど撮影地点の情報が添付されていませんので、最近の分だけでもまとめて書き出しておきます。
ご参考までに。

発車のベルで.../東京目白 自由学園明日館
今朝はJAZZでも.../マンハッタン Bowling Green Park
ツシマノ...4/秋田県八森町
気分を袋に.../秋田県十和田湖畔
ボクに香らない.../秋田県大館市
バンクーバーから.../エア・カナダ バンクーバー線機内
手のひらから.../マンハッタン Financial District
朝霧/秋田県十和田湖畔
ツシマノ...3/秋田県にかほ市象潟
失敗レストラン/秋田県男鹿半島 ホテルきららか
冬の夜は.../長野県妻籠
気が抜けた/長野県安曇野 大王わさび農園
逢瀬、つかのまの/東京秋葉原
  1. 2006/01/19(木) 11:18:26|
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発車のベルでくちづけ

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抱きしめている胸のあたりで女が突然じわりと涙を浮かべても、男は慌ててはいけない。
「どうしたの?」などと野暮なことを聞いてはいけない。
はっきりした理由や意味のない涙を、女はときどき流すことがある。
ガーゼのハンカチのように、やさしくその涙を吸い取る男の胸、それでいいではないか。
泣きたかったらお泣きなさい。いくらでも胸は貸してあげよう、と。
泣いて女は強くなる。泣かれて男は自分の役割を知る。

出発する特急電車に、彼女はホームまで見送りにきた。
ボクは座席に荷物を置いて、発車までのわずかな時間を電車のドアのあたりで彼女と過ごす。
ベルが鳴る。
「じゃあね」と手を差し出して握手を促し、握られた手を引き寄せて彼女にくちづけをする。
このくちづけは、きみの気持ちの“預かり証”だ。

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  1. 2006/01/19(木) 10:37:14|
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今朝はJAZZでも聴きながら...

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おはよう、みなさん。
ごきげんはいかがですか?
僕は、サラリーマン向きの人間ではないけど、さりとて自由業向きかというと、それもあやしい。
自己管理が出来ない。
ちょっとでも時間があると、それを生産的なことに向けるのではなく、怠けるほうに向けてしまう。日が高くてもすぐに酒を飲みたくなってしまう。
期限の迫っている仕事だったら、嫌々でも机に向かっているけれど、期限が先にある仕事だと、仕事してる時間よりも怠けてる時間のほうが長かったりする。
そんなんで、たまには、「こんなんじゃいけない!」と激しく煩悶するのである。
今日がちょうどそういう日です。
今日は仕事に集中しようと。
今日は200%(当社比)の集中力で仕事に専念します、iTunesでJAZZでも聴きながら。

(いつまで集中力を持続できるかはともかくとして…)

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  1. 2006/01/18(水) 11:03:32|
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ツシマノシゴト 4

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『まどろみの海』

 小説家太宰治は津軽の生まれなので、作品にはしばしば津軽の地名や話題が登場する。秋田にはあまり縁がなかったみたいで、作品で秋田に触れているものはほとんどないが、『海』という掌編の中に次のような記述がある。

私たちは甲府から、津軽の生家に向って出発した。三昼夜かかって、やっと秋田県の東能代までたどりつき、そこから五能線に乗り換えて、少しほっとした。

 戦況も絶望的な昭和20年7月、太宰一家の三鷹の家は空襲に遭い、妻の実家のある甲府に逃れたが、そこもすぐに敵機の来襲で焼け出され、あとはもう津軽の生家を頼るしかないという悲愴な旅だ。
 『たずねびと』はこの旅の前半を描いた作品だ。甲府を出て仙台に辿り着くあたりまでの様子が描かれている。その日のうちに乗り継ぐつもりだった上野駅では予定の列車に乗れず、その夜は改札の横でごろ寝。上野を出てからも満員の列車を何度も乗り換え、真夏の熱風、泣き止まぬ乳飲み子…。疲労困ぱいの旅だった。太宰の妻の美知子さんはほとんど乳が出ず、むずかり出した乳飲み子をなだめるすべもない。それを見かねた同乗の女性が、貸してみなさいと赤ん坊を引き寄せ、自分の乳房を含ませる。赤ん坊はほどなく泣き止む…。
 太宰の生家は五所川原から津軽鉄道に乗り換えていく金木という町だから、東能代ではなく弘前を経由するのが順当なのだが、いつ死ぬかも分からない戦況下で、せめて生きているうちに子供たちに海を見せてやりたいというのが東能代経由の理由、と太宰は述べている。
 五能線の乗客が車窓に海を眺められるのは、東八森駅を過ぎたあたり。それまで平たんな田園地帯を走ってきた線路は、東八森の先で、海の際まで迫る白神山地の山塊に押し寄せられるように、波打ち際のぎりぎりを走るのだ。
 念願通り子供に海を見せることができて一人はしゃぐ太宰。数え5歳の長女は海が分からず、「川だわねえ、お母さん。」などと言っている。

「ああ、川。」妻は半分眠りながら答える。

 家族の反応があまりに予想外で、太宰はすっかりしょげ返る。
 太宰の没後、『回想の太宰治』を著わした美知子さんは、妻の側からこの時の旅の様子も述懐している。深浦の宿で酒にありつくことが東能代経由の本当の魂胆と見抜いていたこと、翌朝の深浦での汽車時間までのあいだの磯遊びがこの旅で一番心が晴れやかだったこと、夫がそういう家族のだんらんを書かないで『海』のような少しひねたことばかり書くのを恨みがましく思ったこと、などなど。
 亭主と女房は、同じ時間を過ごしていても、えてして違う感懐に浸っているものなのかもしれない。自戒自戒…。

[キャプション]
太宰一家の視界にたそがれどきの鈍色の日本海が飛び込んでくる。二晩も駅の構内でごろ寝した苦行の旅も、三日目の夜を迎えようとしていた。ここは東八森駅と八森駅のちょうど中間あたり。国道沿いに『海』の文学碑でも欲しいところだ

#2005年9月 『郷』Vol.54掲載

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  1. 2006/01/17(火) 22:56:55|
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気分を袋に詰め放題

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極楽寺の駅前から、迷路のような細い坂道を下っていくと、ほどなく海が見えてくる。
きみはすぐにボクと手をつないだ。
そういえばきみは前から、“手をつなぐのが好きだ”と言っていたのだよね。
それはつまり、一緒に生きていく人とはいつも手をつないでいられる仲でいたかったけれども、どこかで運命の歯車が狂ってしまった地団駄なのだね。
きみが手をつなぎたいのであれば、ボクは喜んで手を差し出すけれども、今こうやってボクたちが手をつないでいるのは、きみにとっては、美味しいものを食べているのではなく、なんだか、サプリメントで栄養を補っているようなものだね。
悲しいhand in handだ。
ボクは汗っかきだから、すぐに手が汗ばんでくる。
それでもきみはボクの手を離そうとしなかった。
二駅分ほど潮風にふかれて海沿いの道を並んで歩き、七里ケ浜からまた江の電に乗って江ノ島まで行ったんだ。
小さなコーヒーショップに向かい合って座って、アイスコーヒーを飲みながら、きみはからからととてもほがらかに笑っていたね。
[袋に詰め放題○○円]ていうような商売があるけど、まるできみは、今日一日の楽しい気分をありったけ袋に詰め込もうとしているみたいだった。

あのあとまた、きみの住む街の近くまで行く機会があったから、「会うかい?」ってメールしたら、できれば別の機会にしてほしい、と言っていた。
からからと笑う気力も萎えがちな、憂鬱の時間を過ごしていたのだね。

今度会うときは、少し大きめの袋を持ってくるといいよ。

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  1. 2006/01/17(火) 02:34:48|
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ボクに香らない香水

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女友だちへのプレゼントに、香水を選んだことがあった。
クリスマスが近かった。
ショッピングモールの売り場で、一つ一つテイスティングして、どんな香りが一番彼女に似つかわしいか、たっぷりと時間をかけて品定めをしている自分がいじらしかった。
とてもいい香りを見つけた。
これなら彼女にぴったりだ。
逢うたびに彼女からその香りが漂ってくれば、ボクはとても幸せだろう。

そんな矢先に、「そろそろこの“冒険の旅”はおしまいにしたい」、と彼女が言い出してきた。
“アヴァンチュール”という言葉はフランス語で、英語の“アドベンチャー”と同義である。
つまり直訳すれば、アヴァンチュールは「冒険」であり、そこから転じて「冒険的な恋」という意味で用いられるようになった。
そんな意味でボクたちは、ふたりのつきあいを“ちょっとした冒険の旅のようなもの”…と言いならわしていた。
その冒険の旅を、そろそろ終わりにしたいと彼女は言うのだ。
クリスマスが間近のことだった。

少し前に一度、彼女がそんなことを匂わせたことがあったけれども、ボクは、「終わりにすることはないよ。もう少し旅を続けようよ。少なくともボクはそうしたい」と言って、彼女に翻意させていたのだった。
しかし、理由までは問いたださなかったけれども、今度は本当に、二人の旅に彼女は疲れていたのかもしれない。

相手が望んでいないことを、ボクは無理強いしたくない。
だから、旅の途中の次の駅で降りたいと言う彼女の申し出を、ボクは受け入れた。

ランチを一緒にして、それでおしまいにしましょ、と彼女が言った。
穏やかな、二人のランチタイムだった。今さら足掻いても仕方ないことなのだし。
クルマで彼女を家の近くまで送っていって、「ほんとはクリスマスにあげようと思ってたんだけど、これ、受け取ってもらえないかな」と言って、香水の入った紙袋を彼女の手に乗せた。
あ、ありがとう。少し驚いたような表情をして、彼女はそれを受け取った。

クリスマスが過ぎた頃、ボクの携帯が鳴った。
「N子です。今空港です。これから実家に帰省してきます。香水、どうもありがとう。嬉しかった」
うんうん、気をつけてね。

今でもその香水を彼女が使っていてくれたら、僕は幸せなのだけど。

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  1. 2006/01/16(月) 00:34:05|
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バンクーバーからの帰り道

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安いチケットを手配したので、ニューヨークからの帰路は直行便ではなく、バンクーバーでの乗り継ぎとなった。
僕は通路側の席だったけれど、搭乗してみると、隣の窓側の席の客は若い女の子だった。
そりゃあ、おばさんやおじさんよりは、若い女の子のほうが嬉しいけれども、ボクもそんなには無節操でもないので、にわかに仲良くなろうとか、やたらと話しかけようとかはしない。
ただ、「そっちの席でいい?」とだけ、聞いた。
もし彼女が通路側の席に座りたいのであれば、替わってあげてもいいと思った。
小さな声で「いいです」と言うので、そのまま並んで席について、結局二人が交わした言葉はあとにも先にもそれっきりになった。
意外だったのは、彼女の服装だ。
20代の女の子らしいよそゆきのおしゃれでもなく、いかにも外国旅行中といった服装でもなく、まるで普段着の、どちらかと言ったら、地味すぎる恰好。
ブラウン系のカーディガン、私鉄沿線の自宅から、二つ三つ先の駅前のショッピングセンターに買物にでも行くような雰囲気だ。
観光ではなさそうだし、仕事ということでもなさそうだ。
ボクはいろいろと空想してみる。
カナダに住む遠距離恋愛の恋人に逢いにきて、その帰り道…。
カナダに留学中で、何かの都合で急に一時的に日本に帰らなければならなくなった…。
とにかく、その地味すぎる服装が、彼女の中に平穏ではない何かがあるような気配を、漂わせていた。
日付変更線を越えて、日本には夕方に近い時間に着く。
凝視していたわけではないが、飛行機が少しずつ高度を下げていき空港周辺の風景がはっきりと見えるようななってきたとき、彼女は窓の外を眺めながら少し目を潤ませているようであった。
どんな涙の意味だったのだろうか。

その涙には気づかない素振りでいるのが、隣の席のボクのつとめなのかなと、ボクは考えていた。

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  1. 2006/01/15(日) 11:51:23|
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手のひらからこぼれていく砂

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「残念だわ。その日は予定が入っているのよ。誰か他の人を誘ってね」

予定があるのならしょうがないけれども、ちょっとだけ僕は言い返したいのだ。
「誰でもいいってわけじゃないんだ。僕は君に会いたいのに、“他の人を誘え”はないだろう。君に会えないのなら、意味はないんだよ」
しかし、それを言葉にしてしまえば、彼女は困惑するかもしれない。
少なくとも、僕が苛立っていることに、彼女は戸惑いを覚えるだろう。
僕は、自分がせつなくなったとしても、彼女を困らせるような恋は、したくない。

もしかしたら、予定なんか入っていないのかもしれない。
彼女は、二人の関係をフェードアウトさせたいと、思っているのかもしれない。
それならそれで、やはり僕は、彼女の望む通りのシナリオに従おう。
別れるときも、憎しみあって別れるのではなく、愛したままで別れることにしよう、一度は確かに愛した人なのだから。

「泣くな、男の子!」
めそめそしている自分に、活を入れる。

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  1. 2006/01/14(土) 21:32:30|
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朝霧

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湖畔のリゾートホテルを、あなたは一夜の宿にするのだ。
誰と一緒に泊まるのか、そんなことは僕は関知しない。
同じ日に、僕も同じホテルに泊まっている。
誰かと一緒かもしれないし、独りかもしれない。
前の晩のうちに、あなたは同伴者にこう告げるのだ。
「あした、朝食の前に湖畔を散歩しようと思うの。一人でも平気だから、あなたは寝ててもいいわ」
僕も同じように、翌朝の湖畔の散歩の予定を組んでいよう。
カメラでも持って、朝の湖畔の風景を撮りたいから、ということにでもして。

そうして僕たちは、朝霧の湖畔で出会う。
「おはようございます」と、声を掛け合う。
たまたま同じ宿に泊まり合わせた客同士、という素振りで。
つかず離れず二人は、しゃわしゃわと小さな波が打ち寄せる湖畔を、少し歩いてみる。

「楽しいひとときでしたね」
そう言い合って僕たちは、ちょっとだけ時間をずらしてホテルに戻る。

僕たちは、間違った恋はしていない。

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  1. 2006/01/13(金) 00:51:29|
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ツシマノシゴト 3

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『夏の日のカスケード 〜象潟町・小滝温水路〜』

 鳥海山は天然のダムである。
 広大な山域に降った雨や雪は、渓谷を伝って大地を潤し、あるいは伏流水となって日本海沿岸の海底から湧出して秋田の夏の味覚である天然岩ガキを育んでもいる。
 この清冽な鳥海山の水は、しかし山麓の農民たちには憎い存在でもあった。水温が冷たすぎるのだ。象潟町の鳥越川の上流域では真夏の8月でも平均水温が10度程度。一般に、田んぼに入れる水が15度以下では米に生育障害が現れるという。実際、象潟町の上郷地区では、かつては米の収量が上がらず、水口付近には苗を植えない「犠牲田」をつくったりもしていた。
 大正15年に鳥越川上流に水力発電所ができると、延長3キロのトンネルを流れてきた水はさらに冷たいものとなり、電力会社は鳥越川流域の集落に補償金を払うことになった。旧上郷村長岡集落の篤農家で理事者(地区長)でもあった佐々木順治郎は、この補償金を元手に一計を案じた。それは、農業用水路の幅を広げ水深を浅くし、さらに階段状にして流れを緩くして、水が太陽に当たっている時間を長くして少しでも水温を上げようという独創的なアイデアだった。こうして昭和2年に完成した長岡温水路は、順治郎の狙いが見事に的中。近隣の集落でもこぞって温水路の造成を手がけ、最大8度以上も水温を上げることに成功したところもあった。
 小学校しか出ておらず、とりわけ学問があったわけでもない一介の農民に過ぎなかった順治郎のひらめきから生まれた温水路は、日本で最初の着想であり、やがて象潟町の他、金浦町、仁賀保町にもこの手法は広がり、さらに全国にも同種の施設を誕生させている。
 象潟町横岡水岡に住む佐々木ヨリさん(83歳)は順治郎の孫娘。「おじいさんにはとても可愛がられた。優しい人だった」と、昭和27年に70歳で亡くなった順治郎を懐かしむ。同町長岡集落に住む齋藤ナリさん(80歳)はヨリさんの妹。「父親は早くに亡くなったけれども、おじいさんがとてもよく面倒を見てくれたので寂しく思ったことは一度もなかった」と言う。「なにしろ酒と馬が好きな人だった」と、ニコニコしながら振り返る。決して裕福な暮らしぶりではなかったようだが、馬産家として馬をこよなく愛し、いつもご機嫌に酒に酔い、そして孫娘たちをとても慈しみながら育てた順治郎じいちゃんであったようだ。
 このあたりには「さなぶり普請」というものがあり、毎年6月第1土曜日には地区の人たちが総出で温水路の清掃や草刈りをする。佐々木順治郎という人は、勲章をもらうような大人物ではなかったかもしれないが、それよりもっと大切なものを、のちの人々に遺していった人だったのかもしれない。

[キャプション]
田んぼに引く水がカスケード(階段状の滝)になって流れていく。鳥海山西北山麓のところどころに見られる特徴的な光景だ。観光スポットではないが、しばし見とれてしまう、秋田が誇るべき美しい田園風景の一つと言えるだろう。

#秋田さきがけ コミュニティー マガジン『郷』Vol.53掲載(2005年7月)

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  1. 2006/01/12(木) 13:20:58|
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失敗レストラン

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失恋に、“失敗”することがある。
たとえば、しばらくの日々を彼女と過ごしてきて、何かほんのちょっとの、小さな違和感、それがなかなか自分の中で克服できなくて、先々のお互いの幸せという観点で考えたら、今のうちに別れてたほうがいいのではないかと、思ったりするわけだ。
どろどろになって、神経をすり減らして、精神を病むような別れ方をする前に、何かもっともらしい言い訳(たとえば、「他に好きな人が出来た」とか)でも繕って、「オレと別れてもらえないか」と、切り出せばいい。
二人の最後の思い出づくりに、海沿いの道をドライブして、海岸に建つレストランで食事をして、最後の最後に、「実は、聞いてほしいことがあるのだけど‥」と。
泣かれるかもしれない。恨まれるかもしれない。当然だ。
それでも、彼女では僕は幸せになれない、僕には彼女を幸せにしてあげるモチベーションがない、ならばやはり今のうちに別れたほうが、お互いに人生の回り道をしないで済む。

「うわぁ、きれい!」
窓際の席につくなり、彼女は歓声をあげる。
沈みゆく日本海の水平線の夕陽に、陶酔のおもむき。
ああ、なんてケナゲで無垢な可愛い横顔…。
(待て待て、オレは今からこの女と別れようとしているのだ。今頃惚れ直してどうする)

「ふふふ、あなたらしいわね」
「え、何のこと?」
「最初からこの夕陽をあたしに見せるつもりだったんでしょ。ったく、なんでも計算づくなんだから…。でも、嬉しいわ。ありがとう!」
(あ、いや、そうじゃなくて…)


そんな塩梅で、作戦が裏目に出て、別れるつもりだった女と別れるタイミングをなくしてしまう男が、いるとかいないとか…。

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  1. 2006/01/11(水) 18:27:07|
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冬の夜はくたびれる

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結婚以来ずっと、女房とは一つのベッドで寝ているのだけれど、凍える冬の夜はすこぶるくたびれる。
少し寒がりな彼女は、無意識のうちに、まるで僕を羽交い締めにでもするかのような勢いでびったしと身体をくっつけてくるのだ。
僕のほうが壁側に寝ているので、夜中にはいつのまにか女房と壁に挟まれて、窮屈なことこの上ない。
(でも、今更別々のベッドで寝るのも癪なので、どちらかが死ぬまでこのベッドで一緒に寝るのだけど)

もう少しリラックスして寝たいという思いもないではないけれども、今日ちょっと僕のフトコロがピンチになって、女房に泣きを入れて彼女の貯金を取り崩して金を借りる仕儀となった。
借りをつくってしまったので、今夜も文句を言わずに女房と壁に挟まれて、僕は寝る。

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  1. 2006/01/10(火) 23:00:41|
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気が抜けた

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仕事の案件が一つ先送りになって、当てにしていた収入がパーになった。

提出していた企画が通りそうだから、至急メールでデータを送れと言われ、慌ててデータを探し出した。

出勤していったばかりの女房から「雪にはまった」とSOSがあって、パジャマの上に服をきて家を飛び出した。

連休明けという約束の入金のために銀行に向かったら、雪で町中の道路がダートコースみたいになっていて、自分で運転していて車酔いしてしまった。

朝からどっと疲れ果て、iTunesから流れるクラシックも耳障り。

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  1. 2006/01/10(火) 13:04:36|
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逢瀬、つかのまの

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「どうする、このあと?」
「うーん、ほんとはもう少し一緒にいたいけど、電車の時間もあるし、そろそろ帰らないと‥」
「そうだね、“差し障り”のない時間に帰らないとね」
「ほんとに、できることならまだ一緒にいたいのよ」
「わかってるって。それはオレも同じだもの」

跨線橋の上で僕たちは軽く握手して、別々のホームに続く階段を下りた。
向こうのホームの階段のたもとに立つ彼女。
こちらのホームで、少し気恥ずかしく照れて真向かいに立つ僕。
僕の乗る電車が先にホームに入ってきた。
ドアが開いて乗り込んで、そのまま反対側のドアの前に立つ。
少し強く、彼女を凝視する。
一度だけ目をそらして、それから彼女もじっと僕を凝視してくる。
静かに電車が滑り出す。
僕は胸の下あたりで小さな敬礼のように手を振る。
それに応えて彼女も胸の前あたりですっと小さく手を振る。

別れを悲しんではいけない。
さっきまで確かに一緒に過ごしていた時間を、僕たちは祝福するべきなのだ。
手のひらに確かに感じていた彼女のぬくもりと柔らかさが愛おしくて、僕はコートのポケットにその手をしまい込んだ。


-----


…という妄想ストーリーとは関係なく、今日やっと当地のJRの運行が再開されました。
さっき街に出たとき、踏切で遮断機が下りて、電車がざざざと駆け抜けていきました。
なんだかちょっと嬉しかったことでした。

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  1. 2006/01/07(土) 15:48:48|
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今日も線路は雪の下

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当面旅行の予定もないので、ひとごとのように今度の大雪を面白がっているけれども、JRの本線が雪に埋もれて朝から一本も列車が走っていないというのは、かなり衝撃的な事実だ。
それも、今日で二日目。
これからロータリー除雪車を投入して除雪を始めるとしても、列車が走れるようになるまでにはあとどれくらいかかるのだろうか。
「お願い! 今すぐあたしに逢いにきて!」などと無茶は言わないように。
行きたくても行ける状況じゃないんだから。

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  1. 2006/01/06(金) 21:07:37|
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漫ろ -SOZORO-

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たとえば“顔見知り”程度の関係でしかなかった異性に、正式に交際を申し込もうと決意して、休日の水辺の公園まで呼び出すことにするわけだ。
相手もなんとなく今日の展開を察知していて、いつになく意識して公園に向かうことになるだろう。
いや、もしかしたら、その人は公園には現れないかもしれない。
その人は、僕のことを嫌いではないかもしれないけれども、さりとて、恋人としてつきあうにはためらいやとまどいがあるのかもしれない。
好きとか嫌いではなく、「そんな目ではあなたを見れない」…みたいな。
少し早く公園に着き過ぎた僕は、かえってその人が現れるまでの時間が途方もなく長く感ぜられてしまって、それが苦痛になってくるのである。
そわそわ…という形容は当たらない。ざわざわ、なんだか気持ちの悪い胸騒ぎのような感覚。
いっそ、こんなことはしなけりゃよかった、と思ってしまう。
その人が現れる前に帰ってしまおうかと思う。
あるいは、少しおちゃらけて電話でもして、「急用が出来てしまったから済まないがまた今度にしてくれないか」と、自分からキャンセルしてしまうか。

キモチに余裕があるのであれば、文庫本の一冊も持って出て、彼女が目の前に現れても気づかないくらいに無心にベンチで文庫本を読み耽るのも、優雅な休日のひとときだろうが、とてもとても今は気もそぞろで、何十時間の自由時間があっても、その時間の有効な使い道を思い当たらないのである。


…と、恋の話に例えてみたけれども、そんなつやっぽい話とは関係なく、今の自分はちょっと気もそぞろで、時間はたっぷりあるのに、いや、やっておくべき仕事もあるのに、頭がぽわ〜んとしてしまっていて、まったく何も手につかないのだ。
単に、正月三ヶ日の酒の飲み過ぎの後遺症、なんだろうけど。

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  1. 2006/01/04(水) 15:59:04|
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僕 -SHIMOBE-

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年賀状はいつも暮れになってからばたばたと手づくりする。
(多少のウケを狙いながら)
今年の年賀状はどんなネタでいこうかと思案していたところ、僕の仕事場のアコーディオンドアをカリカリと前足で引っ掻いて「入れてくれ」と座敷犬がやってきた。
座敷犬は、いつもは居間が彼女の居場所なのだけど、所在なくなったり人恋しくなったりすると、カリカリとアコーディオンドアを引っ掻いて僕の仕事場に入ってきてストーブの前でまったりしている。

おお、しもべ、ちょうどいいところに来たじゃないか。
よし、ちょっとこのソファの上におすわりしてろ。
はい、こっち向いて! カシャ!
うーむ、薄汚れているけれどもとりあえず白い犬だから若干露出補正かけたほうがいいかな。
よし、ごくろう。用は済んだ。あとは好きなようにしていろ。

てなわけで、戌年にちなんで我が家の飼い犬をモチーフにするという、実に安直な年賀状の出来上がりとなったのである。

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  1. 2006/01/02(月) 13:03:08|
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